~「自民党の憲法草案」の問題点、その1~
96条の改正をもくろむ安倍政権ですが、改憲へのハードルを下げたら、憲法のどこを変えようとしているのでしょうか?そして、それは、私たちにとってどんな問題となってふりかかってくるのでしょう?みんなで考えてみませんか。
1、憲法を守るのはだれだ?
突然ですが、憲法クイズです!
問題 次のかっこの中に入る言葉はなんでしょう?
憲法第99条 ( )、その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。
これは、「憲法遵守義務」と言われるものです。( )の中に入る「憲法を守る義務がある人」は、「天皇」「摂政」「国務大臣」「国会議員」「裁判官」です。これを見ると、前回取り上げた「憲法が権力者を縛るもの」という、「立憲主義」が、はっきりと表れていることがわかるでしょう。
では、自民党の憲法改正草案はどうなっているのでしょうか?
第102条は次のようになっています。
「すべて国民は、この憲法を尊重しなければならない。」
これは、「立憲主義」を真っ向から否定するものというほかはありません。権力についた自分たちが自由にやりたいから、そして、国民にはおとなしく従ってもらいたいから憲法を変えるのだという「本音」が透けて見えます。
さらに、第二項は
「国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。」
第二項は現行憲法と似ていますが、なんと「天皇と摂政」が削除されています。天皇に憲法の遵守義務がないということは、天皇を「憲法を超越した存在」にするということになります。
2、天皇の地位をどう変える?
では、天皇の地位をどのように変えようとしているのでしょうか?
「第一条 天皇は、日本国の元首であり、日本国および日本国民統合の象徴であって、その地位は主権の存する日本国民の総意に基づく。」
つまり天皇を「元首」にしようということです。しかも、「主権の存する日本国民の総意に基づく」としながら、憲法を超越した存在にするのですから、戦前の軍部のように「天皇」を利用した「やりたい放題」が再現する可能性があります。
さらに、第5条は
「天皇は、この憲法に定める国事に関する行為を行い、国政に関する権能を有しない。」
となっています。
ここで再び、憲法クイズです。
ちょっと読んだだけでは、現行憲法と変わらないような条文ですが、ある重要な言葉が、削除されています。それはなんでしょうか?
現行憲法の第4条は、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」となっています。つまり、答えは「のみ」でした。しかも、この前に、第3条として「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣がその責任を負う。」という条文がありましたが、なんとそれが「削除」されているのです。天皇の国事行為の制限と、内閣の責任を外してしまうことは、何を狙っているのでしょうか?注意深く考える必要がありそうです。