憲法:

2013年6月28日(金)

シリーズ 今、憲法が危ない!⑤ 日本国憲法第24条―女性の権利―について(その1)

日本国憲法第24条―女性の権利―について(その1)

憲法第24条は、「家族生活における個人の尊厳と両性の平等」について述べています。昨年亡くなったベアテ・シロタ・ゴードンさんが起草したものです。

日本国憲法の成立とベアテさんの草案

日本の敗戦後、1946年に、ポツダム宣言に従ってGHQから憲法改正を命じられた時、日本政府が大日本国憲法とほとんど変わらない案を出したので、GHQが代わりに約10日間で草案を作りました。
ベアテさんは女性に関する条項を任されました。彼女は戦前の日本で長く生活していたので、日本女性の無権利状態をよく知っていました。彼女は「女性と子どもが幸せにならなければ、日本は平和にならないと思った」と語っています。

大日本帝国憲法(明治憲法)下の家制度と女性の無権利状態

大日本帝国憲法下の明治民法では、「戸主」を頂点とする家制度が定められていました。戸主権は長男が相続し、女性と長男以外の男性は差別されました。結婚は家と家の間のもので、女性は結婚式で初めて夫の顔を見ることさえ珍しくありませんでした。結婚した女性は、一切の決定権を持たない「無能力者」として扱われ、自分の財産も持てず、選挙権もありませんでした。妻妾同居さえありました。子どもの教育権もなく、学校では、母親が来るのに「父兄会」と言っていました。母親は父や兄(長男)の代理にすぎなかったからです。

女性の権利条項に反対した日本政府

GHQの草案ができると、日本政府との間で突合せが行われました。この時日本政府が最も強く反対したのが、象徴天皇と女性の権利でした。日本政府は「日本には、女性が男性と同じ権利を持つ土壌はない。日本女性には適さない」と主張しました。これが今から67年前のことだったのです。しかしベアテさんの書いた第24条は、GHQによって入れられました。
日本国憲法草案が新聞で発表されると、日本国民の多くはこれを歓迎しました。そして戦後初の普通選挙で選ばれた女性議員を含む国会で審議され、日本国憲法は成立しました。

第24条【家族生活における個人の尊厳と両性の平等】
① 婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
② 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 「婚姻は両性の合意のみに基づ」く。戸主同士の合意によって成立した戦前の結婚と180度違う規定でした。
また、家族の尊厳と両性の平等が規定されたことにより、男性と女性、長男とそれ以外の子どもも平等となりました。この条項は、法の下の平等を定めた第14条と並んで、男女の平等を保障するものとなりました。しかし、その後の長引く民法改正論議に見られるように、選択的夫婦別姓や、婚姻外の子どもの平等など、未解決の問題はまだ残されています。

参考文献:1945年のクリスマス ベアテ・シロタ・ゴードン 柏書房

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