憲法:

2013年7月8日(月)

シリーズ 今、憲法が危ない!④自民党の憲法草案の問題点(その3)

 今回は、自民党の「憲法改悪」の本丸ともいえる「憲法九条」にかかわる条項を見ていきましょう。

改正草案の第九条は次のようになっています。

第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、用いない。

2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。

  九条の第1項は、現行憲法と似てはいますが、「戦争の放棄」については、明らかにトーンダウンしています。現行憲法では、「(前略)国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または、これの行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」となっています。自民党案では、「戦争は放棄、武力による威嚇及び武力の行使は用いない」と、戦争と、武力による威嚇及び武力の行使を分けて規定しています。建前として表向き「戦争の放棄」は残すけれども、実際は違うということになるのでしょう。

 それが明らかなのは、第2項です。現行憲法では、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」となっているのに、「自衛権の発動を妨げない」としているからです。しかも「自衛権の発動」という言葉が、都合よく利用されてきたことは、歴史が証明しています。

 次に、改正草案で新設された「第九条の二」を見ていきましょう。

第九条の二 我が国の平和と独立並びに国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。

2 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

3 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命もしくは自由を守るための活動を行うことが出来る。

4 前二項定めるもののほか、国防軍の組織、統制、及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。

5 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は、国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に裁判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保証されなければならない。

 「国防軍」保持を憲法でうたっています。第1項の「戦争の放棄」が全くの空文となってしまい、戦闘と戦争をさせないという歯止めが、憲法から消滅することになります。

 第三項では、国防軍の任務について定めています。「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」という名目で、海外派兵=米軍の下請け戦争がどんどん進められることになります。さらに「公の秩序を維持し、又は国民の生命もしくは自由を守るための活動」というのは、だれが判断するのでしょう。戦前の「治安維持法」のような「きな臭さ」が漂っています。

さらに、第5項では「軍事裁判所」の設置が規定されています。国防軍の軍人と公務員が対象のようですが、「国防軍の機密に関する罪」という規定には、「だれが?」という規定がありません。ということは、ジャーナリストのような民間人も、国防軍の機密について調べたとたんに、軍事裁判にかけられるということになるでしょう。暗黒社会の扉が開かれるとはこのことでしょうか。

さらに、第九条の三では、

国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海、領空を保全し、その資源を確保しなければならない。

なんでここに、「国民の協力」を入れているのでしょうか。いざとなったら「国民を盾にする」ことを考えているとしか思えません。

 以上のように、自民党の改正草案が、現行憲法の平和主義を否定し、「戦争を放棄した国」から「戦争のできる国」を目指したものということは明らかです。安倍首相をはじめ、国防軍をつくることや、「いざとなったら戦争をしよう」などと考える政治家は、決して戦地に行かないのです。もしも、自民党案のように憲法が変えられてしまったら、私たち教職員は国防軍に加わることや戦争に行くことを、教え子たちに「仕事」として強制することになってしまうのです。

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