憲法:

2013年7月18日(木)

シリーズ 今、憲法が危ない!⑥ 日本国憲法第24条―女性の権利―について(その2)

 自民党の憲法草案は、24条をどう変えようとしているのでしょうか。

 自民党憲法草案 第24条(家族、婚姻等に関する基本原則

 ①家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は互いに助け合わなければならない

 ②婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。                         

 ③家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 「尊厳」「平等」が見出しから消える

 日本国憲法には各条の見出しはありませんが、衆議院・参議院の法制局によるものが使われています。24条は「家庭生活における個人の尊厳と両性の平等」です。自民党草案はそれを「家族、婚姻等に関する基本原則」と変えるとしています。これでは全く意味が違います。第3項には「尊厳」「平等」がありますが、24条の一部分に過ぎなくなります。
 また、自民党草案の第2項では「婚姻は、両性の合意に基づいて成立し」とし、現行の「(合意)のみ」をわざわざ削っています。その意図は何か、と考えざるを得ません。第3項では、「配偶者の選択」「住居の選定」が消え、「扶養、後見」「親族」が入っています。「扶養」を入れるところに意味がありそうです。

「家族の尊重」規定を新設
 「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。」という文言が挿入されています。誰が家族を尊重するのか?また法的に届け出た家族だけを尊重するのか?事実婚のカップルも、同性同士のカップルもいますし、1人暮らしの人も増え続けています。これらの人々は尊重されないのでしょうか?憲法は、本来様々な形のある「家族」の尊重よりも、家族の中での各個人の人権を保障すべきです。そして例えばDVなどを、国が全力を挙げて防止するための根拠とすべきです。

家族の助けあう義務を新設
 最大の問題は、「家族は互いに助け合わなければならない」としていることです。一般論としてはその通りですが、「憲法は権力者を縛るもの」という立憲主義から見れば、おかしな規定です。憲法に「家族は助け合え」と書いて「国民が守らされる」筋合いのものではありません。
 むしろ、この規定によって、社会保障が減らされるのではないかと心配されます。現在すでに、生活保護費の削減が、13年度予算の成立によって確定してしまいました。日本の生活保護受給率はわずか1.6%(2012年)にすぎず、イギリスの9.27%(2010年)、ドイツの8.2%(2009年)、フランス5.7%(2010年)などより非常に少ないにもかかわらずです。さらに、子どもの保育・養育、老親や病人、「障害」を持つ人の介護・看護等々が、今以上に「家族の責任」とされ、社会保障費がますます削られるのではないでしょうか。

女性の家庭責任を重くする危険性
 そうなった場合、「家族の責任」は主に女性にかかってくるでしょう。民間の育休を3年間に延長すると言って、安倍首相は「3年間抱っこし放題」と言いましたが、3年間休んだら職場復帰しづらくなる、という反対論が強く出ています。この時、「3年間育休をとって、子どもを抱っこし放題のお父さん」は、安倍首相の念頭に浮かんだでしょうか。もし浮かんだのなら、男性が育休を行使できる方策をこそ講じるべきでしょう。また、女性が若い時に妊娠する方がいいという「知識」を広めようと「女性手帳」が作られようとしました。これも「なぜ女性だけに産むことをおしつけるのか」との反対意見が強く出て、撤回されました。これらの動きからは、「女性は若いときに出産せよ」「育児は女性」という強制が強まると思われます。

 24条が改悪されれば、女性の生き方は大きく制約されます。「平和と平等」をしっかり基盤に据えて、憲法改悪に反対しましょう。

 

              

 

 

 

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