-子どもたちと考える新エネルギーの授業-
第60回関東地区「母と女性教職員の会」 第5分科会 平和・環境 東京のエネルギーを探そう!
東京都・小学校教諭 平林麻美
1エネルギーの授業を子どもたちとやるきっかけになったこと
東日本大震災の日、私は東京の小学校に勤務していました。そこで地盤沈下が起こり校舎の周りに段差ができてしまいました。マンホールが20㎝位浮き上がり、校庭に細い地割れが走り、液状化のため水が湧いてきたことを経験し、地震の恐ろしさを目の当たりにしました。計画停電もあり、節電につとめました。放射能にも怯え、子供に手洗いうがいを奨励しました。新学期になり、地震について知る必要があると考え、4年生の子どもたちと総合学習で「知ってそなえよう!地震の大研究」と題して新しい授業をつくったのです。5月から7月をかけて、震災の被害の様子や「地震」と「津波」と「地盤沈下」のしくみ、「避難生活」について調べて学びました。避難生活に役立つグッズも子供達と作ってみました。電気の作り方や使い方も今まで通りではいかなくなりました。人間が制御できない原子力発電に頼らず、再生可能なエネルギーを使う社会に変える必要があると感じました。そこで子ども達と一緒に電気やエネルギーついて考えたいと思い「新エネルギー」の授業をやってみました。夏休み明けの最初の授業です。その様子を報告します
2「電気はどうやってできるの?」
まずは夏休みにどんな節電をしたか聞きました。「エアコンを控えて扇風機と水風呂で耐えた」「プールとか公園とか博物館とか、家の電気を使わないようにいろんなところに行く」子供達はいろんな節電方法を言っていました。『いろいろ工夫して節電しましたね、ところでみなさん、電気はどうやって作るか知っている人はいますか』と聞くと、発電所で電気をつくることは知っていても発電のしくみについては知りませんでした。そこで、金属の線をぐるぐる巻いた「コイル」に磁石を通してやると、電気が流れ始めることを教えました。そして実際に手回し発電機でひとりひとり電気をつくってみました。「わー、面白い」「早く回すと明るくなるね」『何かを回せば電気ができるとわかりました。みなさんの電気をつくっている発電所の大きな発電機も、磁石の中でコイルを回して電気を取り出すやり方になっています。』そして、水力発電、風力発電、火力発電所、地熱発電、原子力発電、太陽光発電について、そのしくみを説明しました。
3「東京にも発電所はあるの?」
次に『みんなが住んでいる東京都にある発電所はどれだと思いますか?』と聞きました。結果は、風力発電所があると思う人がたくさんいました。つぎは火力と太陽光で、水力発電所があると思った人は半数でした。地熱発電所と原子力発電所は、あると思った人がいませんでした。正解を教えるために東京の発電所の写真を見せました。 『山のほうに水力発電所が5か所、海のほうに火力発電所が2か所と風力発電所が2か所、八丈島に風力発電所と地熱発電所が1か所ずつ、御蔵島に水力発電所が1か所あります。東京に発電所は12か所あります。じゃあ、東京にある発電所で電気は足りていると思いますか?』「足りない」「ほかの県からもらう」すぐ答えが返ってきました。そこで、首都圏にある火力発電所15か所や、全国にある原子力発電所について教えました。
4「なくなるエネルギーとなくならないエネルギー」
発電所で使うエネルギーはなくなるエネルギーとなくならないエネルギーの二つに分けることができることを教えました。石油、石炭、天然ガス、ウランがなくなるエネルギー(枯渇エネルギー)です。そして、水、風、太陽、地熱がなくならないエネルギー(再生可能エネルギー)です。発電の95%を、なくなるエネルギーに頼っていることを伝えると、なくならないエネルギーで発電する必要を子供達は感じたようです。再生可能エネルギーを使ったどんな発電があるのか、写真をつかって紹介しました。ラクダの背中で太陽光発電、トイレの洗浄水でマイクロ水力発電、家畜の糞尿でバイオマス発電、サッカースタジアムで振動発電などに子どもたちは興味津々でした。波力発電、海流発電、潮力発電なども教えました。
5「学校で発電できるかな?」
これらの発電方法を自分たちの身近なところで使うことはできないか、子どのたちにアイデアを話し合ってもらいました。 「校庭の下に振動発電を埋める。体育館の床にも階段にも振動発電。」「ランドセルにソーラーパネルがついていて、それで発電する。みんなで学校にそれを背負ってきて、ためた電気でエアコンをつける。」「半透明の太陽光パネルを自動車の窓につける。暑くならないし。」「鉛筆削りに発電機をつけて鉛筆を削りながら、その力で発電する。」「クーラーボックスの上にソーラーパネルをつけて冷蔵庫みたいに冷やす。」「エコカーの屋根に太陽光パネルをのせて、車輪のまわる力でも電気をおこす。車体のうしろのほうに電気をためて、そこを開けるとコンセントになっていて使えるようにする。」「黒板にトントントンって書く振動で発電する。」「帽子のてっぺんにソーラーパネルがついていて、夏はひさしのところで扇風機を回す。冬は電気でカイロをあっためるのに使う」 キラキラと目を輝かせながら発言が続き、50近くのアイデアがでました。子どもたちの想像力が未来にはばたいた時間でした。
授業をしてみて、子どもたちの想像力が予想以上に豊かでおもしろかったり、実現可能なほど具体的だったりすることに、未来への大きな希望を感じました。まだ、問題は多いけど、自分たちの使うエネルギーを自分たちで作っていく社会が近未来に実現できると思いました。これからもエネルギーも地産地消です。子どもたちがエネルギーについて意識を高く持ち、未来を築いていくおとなになってほしいと思います。