憲法:

2013年11月29日(金)

シリーズ 今、憲法が危ない!⑨最終回

1. もう一度確かめよう!憲法の原則と理念

これまでこのシリーズでも確認してきましたが、日本国憲法の三大原則は「基本的人権の尊重」「国民主権」「恒久平和主義」ですが、これを支える理念が、「立憲主義」でした。立憲主義とは、国家権力が暴走しないために、憲法によってあらかじめ歯止めをかけるという考え方です。権力が暴走したり濫用されたりすると、国民の権利や自由が侵害されてしまいます。したがって立憲主義=憲法は、「基本的人権」を人々に保障するためにあるということが出来ます。権力を担うものが選挙によって選ばれた代表者となっている民主主義の国であっても、権力の暴走はあり得ます。したがって立憲主義は、国民の多数意見でも奪ってはいけない価値=「基本的人権の尊重」をあらかじめ憲法に規定しておくことにしたのです。  さらに、ひとたび戦争が起きてしまうと、基本的人権がないがしろにされてしまうことは言うまでもありません。このことは、かつての日本が、アジアの人々に対して何をしたか、日本国内の人々に何をしたかを考えれば、容易に理解できます。東アジアで、緊張が高まっている今、もう一度憲法の理念を、実態のあるものにしなくてはなりません。

2. 憲法の危機は、いまどうなっているのか

「戦後レジュームからの脱却」を掲げて、「憲法改正」を目指していた安倍政権ですが、直接的な「憲法改正」については、トーンダウンさせています。これには、アメリカのスタンスが大きな影響を与えていると考えられます。そもそも「日本国憲法」で、軍国主義から民主的な平和国家になることは、サンフランシスコ平和条約での、日本の国際社会復帰の条件であったということが出来ます。その日本国憲法を根幹から変えるということは、サンフランシスコ平和条約体制の否定であり、アメリカを含む「連合国」との戦争状態に戻るということを意味します。一方で「日米同盟」を掲げ、他方で日本国憲法を否定するのは、全く矛盾しているのです。 しかし直接的な「改憲」論議が影を潜めている中、憲法の危機は、さらに深まっているといわざるを得ません。現在臨時国会で審議中の「特定秘密保護法案」や「国家安全保障会議設置法案」、憲法解釈変更による「集団的自衛権の容認」などによって、安倍政権は実質的な憲法改悪をもくろんでおり、与党が衆参で圧倒的な勢力により数の力で押し切ろうとしているのです。こうした法案が成立してしまうことは、基本的人権が制約されるとともに、憲法の歯止めが、次々とはずされ、戦争への道が開かれることにつながるのです。

3. 憲法の課題を考える

憲法がいまだかつてない危機を迎えていることはもちろん、日本国憲法が「万能」ではないことも、また事実です。シリーズの最終回にあたり、そのことを考えてみたいと思います。 沖縄は今年、「本土復帰40周年」を迎えました。しかし、米軍基地の7割以上が沖縄県にある現状は、全く変わっていません。沖縄の人々は、こうした現状を「憲法番外地」と呼んでいます。沖縄の人々は本土復帰によって「日本国憲法」の適用を受けられることを願っていました。しかし、現実は全く違っていたのです。 また、震災と原発事故により、故郷から避難を余儀なくされている福島の人々もまた、「憲法番外地」におかれているといえるのではないでしょうか?憲法13条の「幸福追求権」25条の「生存権」があるにもかかわらず、福島の人たちには、適用されていないかのような状態です。 さらに在日の人々も、「憲法番外地」に置かれてきました。1945年まで強制的に「日本国民」とされていた、韓国・朝鮮の人々は、その意思を問われることもないまま、「日本国籍」から除外されてしまいました。さらに、憲法の権利が、「国民の権利」とされていることで、日本政府や社会の「民族差別」「外国人差別」が容認、温存されてきたのです。 こうしたことを考えると、未だかつてない憲法の危機の中で、ただ「憲法を守れ」というだけでは不十分であるということなるでしょう。今こそ、憲法の価値を現実の社会の問題の中で、よみがえらせなければなりません。また、「立憲主義」など、憲法学習の中でこれまであまり取り上げられてこなかったことを、身近な人たちや、次代を担う子どもたちにしっかりと伝えていく必要があります。そのことを確認して、シリーズの締めくくりとしたいと思います。

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