東京都教育委員会は11月9日、教員の長時間労働の実態を把握するため今年度6月~7月に行った勤務実態調査の結果(速報値)を公表しました。調査は、都内の小・中・高および特別支援学校の計105校を対象に、今年の6月19日から7月16日のうち連続する7日間で実施されたものです。
中学校では7割が過労死ラインで働く
調査結果では、週60時間(=月の残業80時間超)を超える「過労死ライン」相当にある教員が、小学校で37.4%、中学校で68.2%、高等学校で31.9%、特別支援学校で43.5%存在していることが明らかになりました。しかもこれは、在校時間の累計で持ち帰り仕事は含まれていない数字です。さらにこの調査は回答時間として一律に小学校で105分(!)中学校で92分もの膨大な時間が差し引かれた数字(文科省調査の差し引き時間の1.5倍)なのです。
全国平均を上回る東京都の実態が明らかに!!
週の平均在校時間では、小学校教諭で58時間33分、中学校で64時間35分といずれも、4月公表の文科省調査における全国平均値より1時間程度多く、全国からも突出している過酷な実態が明らかになったと言えるでしょう。
結果を重く受け止め、業務改善を!「学校における働き方改革推進プラン(仮称)」中間まとめも公表
把握したからには、このまま放置はできません。過労死ラインを超えて働く実態を、何としても改善させていかねばなりません。都は結果公表と同時に、この実態に対する対策として「学校における働き方改革推進プラン(仮称)」を策定するとして、その中間まとめとしてプランの素案を発表しました。そして、現在この中間まとめに対しての意見募集(パブリックコメント)を行っています。
それによると、まず、働き方改革の目標として「週の在校時間が60時間を超える教員をゼロにする」としています。過労死ラインを超える働き方を問題視し、改善しようという姿勢は一定評価しますが、そのために、1日の在校時間を11時間以内、土曜日曜はどちらかは休養できるようにする、などという数字の設定をしています。本当に死んでしまうようなラインを限度にしてしまっては、逆にそこまでの過酷な労働は認めてしまうことにもなりかねません。定時退勤・土日の労働はどちらも不可などの方向性にしなくては意味がありません。
また、とりくみの方向性として、(1)在校時間の適切な把握と意識改革、(2)教員業務の見直しと業務改善の推進、(3)教員を支える人員体制の確保、(4)部活動の負担を軽減、(5)ライフ・ワーク・バランスの実現に向けた環境整備、を挙げています。項目だけ見れば東京教組が策定した「長時間労働是正のとりくみ方針」と同じ視点をもっています。さらに、部活動指導員の導入促進、学校閉庁日の設定など、組合が要求してきた事項も盛り込まれ、その点は評価できます。
しかし、それぞれの項目の具体的な検討例については、都立高のタイムカードの実施や、公務システムの一元化などすでに実施しているものばかりで、あとで「都はやっていますよ」と言いやすいものばかりが並んでいます。現在の秋闘では、都庁職の「フレックスタイム」や「テレワーク」などの耳障りの良いことを並べ、実効性がない「名ばかり働き方改革」を提案してきています。このような形だけ改革にならないよう、大いに警戒が必要な案になっています。
短い期間(11月9日~12月7日)ではあるものの、この「中間まとめ」に対する意見募集が行われています。ここに現場からの意見を集中させ、少しでも実効性のある「改革」にさせていきましょう。