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人事異動が変わりました

 人事異動要綱が変わりました

新たに「ステージ制」を導入、これまでの地域制と併用
2ステージ経験で3地域経験とみなされる

2012年8月9日都教委は、「新たなステージ制の導入と活用」「公募制人事異動の明確化」
「異動要項の1本化」を柱とする改正人事異動要綱を発表しました。これまで人事異動
要綱は、小中学校・都立特別支援学校・都立高等学校に分かれていましたが、今回の
改定で1本化されることになりました。
東京教組は、7月に今回の「異動要項改訂案」の提示を受け、改定内容について、
疑問点の解明など事務レベルでの折衝を行うとともに、8月3日(金)には、人事異動
要請を行って、異動における組合員の希望実現にむけとりくみを進めてきました。
今回の発表を受け、改正内容のポイントをお知らせします。

1 異動要綱改正のあらましとねらいは?
今回の改正のもっとも大きなポイントは、新たに設定された「ステージ制の導入」です。ただし、これまでの1~11地域と島しょに分かれていた地域の指定は変わりません。ただし、今までは3地域を経験していなければ認められなかった「同一地域内の異動」が「異なる2つのステージ」を経験することによって可能となります。これについては、後で詳しく説明します。
都教委は今回の改正について、「広域的な人事異動、異校種間異動の促進」「区市町村教育委員会・校長の人材育成支援と人事構想の反映」の視点から行うとしています。前回の改悪では、校長権限の強化により、学校経営方針が最優先とされ、校長、地教委の裁量が大幅に認められたため、本来最優先とされるべき教職員の生活がないがしろにされる人事異動が行われる結果となっていました。東京教組は、こうした強制的な人事異動の抜本的改定を求めて、労使による「人事異動検討委員会」の設置を要求してきました。残念ながら都教委は「検討委員会」の設置を認めていません。しかし、今回の改正では、「異動の目的」「異動の方針」において、いくつかの文言が改正されている点が注目されます。
一つ目は、「異動の目的」に「都全体の教育水準の向上をめざす」という言葉が、明記されました。さらに、「(教員の)資質能力の向上と人材育成を図ることを目的として、教員の定期異動を行う」と、今までよりも「資質能力向上」「人材育成」を強く打ち出した要綱となっています。
二つ目に「異動の方針」では、「東京都教育委員会や区市町村教育委員会の教育施策の推進並びに、校長の学校経営や人材育成支援のため、きめ細かな人事異動を行う」と、「都教委・地教委の教育施策の推進」を、「校長の学校経営方針・人事構想」より前面に打ち出しています。
都教委は、こうした改正点については、「運用面で特に変わるものではない」と回答していますが、今後は地教委・校長に対する交渉において、「人材育成の視点」を学校経営や人事構想に十分反映させ「あなたはいらない、異動してもらう」などといった管理職の不適切な発言を許さず、「恣意的・差別的な人事異動」や「人事異動を契機としたパワハラ」などの防止に向けて、とりくんでいくことが極めて重要となっています。
また、今回の改正では、これまで「小中学校」「高等学校」「特別支援学校」のそれぞれに分かれていた異動要綱が、一本化されました。ただし、要綱が一本化されたことで「人事異動についての日程等に変更があるのか」とういう東京教組の質問に対し、「変更はない。(小中学校の異動日程は)昨年並みを予定」と回答しています。日程の詳細は、9月7日に行われる予定の地教委対象の「人事異動説明会」で明らかになると思われますが、現在のところ、「異動検討結果の通知」(11月末)「異動内示」(2月末)については、昨年並みの日程となる見込みです。また、高等学校への異校種異動について、「高等学校の人事配置の状況をふまえて対応する」と回答しており、状況が大きく変わることはありません。ただし、高等学校には、異動希望先に「区市町村立学校、都立特別支援学校」が、新たなステージとして加えられました。今後、中学校と高等学校との間での「異校種間異動」がどの程度の規模で行われることになるのか、注目していく必要があります。
これまで、西多摩地区や島しょ地区、特別支援学校への期限付き異動など、異動要綱の規定にない異動が「公募制」によって行われてきました。今回、要綱第5「異動の方法」の4に「公募の取り扱い」という項目が新たに起され、「公募に係る異動については、本要綱の定めにより行う。詳細については別途定める」とされました。すでに、島しょ地区と西多摩地区については6月6日付で、特別支援学校への期限付き異動については7月6日付で、各区市町村教育委員会に募集要項が下りています。                    

2 ステージ制とはどのようなものか?
今回、新たに導入されることになったステージ制について、説明します。
まず、各区市町村が12地域に分かれ、「5校経験するまでに、3地域を経験する。3地域を経験した者は同一地域内での異動ができる。」という原則は、これまで通りです。そのうえで、今回新たにA・B・Cの3つのステージが設けられることになりました。ステージの分け方は次の通りです。

  ステージ 地区等・学校の区分
 Aステージ  区立の小中学校
 Bステージ 市立の小中学校
 Cステージ  (島しょ地区を含む)町村立小中学校
児童自立支援施設に在籍する児童生徒が通う小中学校
区市町村立学校特別支援学級(区立特別支援学校を含む)
都立学校等

このステージのうち、「異なる2ステージを経験したものは、異なる3地域を経験したものとみなされる」ということになりました。ということは、ステージをまたいで異動した場合、異動してから3年勤務すると「3地域を経験した」ことになるので、次の異動から「同一地域での異動」ができることになります。ただし、ステージが異なっていても同一地域内での異動では、2ステージを経験したものとはみなされません。

 3地域のみなしが認められる場合、認められない場合とは?
では、具体的な例を挙げて解説しましょう。
Aさんのケース
江戸川区立の平井小学校(通常学級)に新規採用され、5年目に町田市立の小山小学校(通常学級)に異動しました。
Aさんの場合、江戸川区は第6地域で、町田市は第7地域です。また、平井小学校はAステージ(区立の小中学校)、小山小学校はBステージ(市立の小中学校)となっているので、Aさんは、異動後3年勤務すると「異なる2ステージ」を経験したことになります。すると、まだ2校しか経験していませんが「異なる3地域を経験したものとみなされる」ので、次の異動では、「町田市内での異動」が認められることになります。
Bさんのケース
日野市の通常学級に4年勤務した後、青梅市の特別支援学級に異動しました。
この場合は、8地域から11地域への異動となり、かつ、BステージからCステージ(特別支援学級)への異動となるので、Aさんと同様、3年勤務すると「2ステージ経験」となり、「3地域経験とみなされる」ことになります。
Cさんのケース
世田谷区の中学校(通常学級)に5年勤務した後、新島の中学校に異動しました。
この場合第3地域から島しょへの異動であり、さらにAステージからCステージへの異動になります。そこで、Aさんたちと同じく、3年勤務すると異なる2つのステージを経験したことになります。

Dさんのケース ☆2ステージ経験にならない場合
大田区の特別支援学級で3年勤務してから目黒区の通常学級へ異動しました。
この場合、ステージはCからAへの異動ですが、大田区と目黒区が第2地域で同じ地域となっているため、「2ステージ経験」とはなりません。ただし、大田区での特別支援学級での経験は「任意の1地域としてカウント」されます。
このように「2ステージ経験とみなされる」ための条件をまとめると
「同じ学校・地区・地域内ではない、異なる2つのステージを経験すること」となります          

4 特例が認められる場合は?
今説明したように、2つのステージ経験が認められるのは、「同じ学校・地区・地域内のステージ経験ではない」ことがポイントでした。しかし、特例として、同一地域内の経験であっても、また異なるステージでなくても「2ステージ経験」が認められる場合があります。
①特別支援教育にかかわる期限付き異動で、3年後に現任地区に戻る場合
例えば、世田谷区立小学校に勤務し、「特別支援教育にかかわる期限付き異動」で都立特別支援学校に異動。3年に世田谷区内の小学校に戻った場合がこの特例にあたります。ステージはAとCになりますが、同一地域内の異動なので通常では「2ステージ経験」にはなりません。しかし、特例により「2ステージ経験」となります。ただし、あくまで特別支援教育にかかわる期限付き異動で、3年後に現任地区に戻る場合に限られます。
②異種学校間異動で「2ステージ」とみなされる場合
三鷹市の中学校(美術4年)から調布市の小学校(図工専科)へ異動した場合
このケースでは、地域は第9から第10ですが、どちらも市立の中学校ですから、ステージはBからBなので、2ステージになっていません。しかし、異種学校間の異動(中→小)なので、2ステージ経験が認められます。これに関して都教委は「Cステージの都立学校等の『等』の中に中学校と小学校との間での異動(異校種間異動)が含まれる」と回答しています。つまり、この場合はステージが「BからB」ではなく「BからC」に変わったとみなされるのです。                    

5 これまでの異動や地区経験はどのように扱われるのでしょうか
→期限を設けず遡及される!これまでの異動もステージ経験になる
これも具体例で説明します。
 Eさんのケース
世田谷区の通常学級で4年、杉並区の通常学級で8年、武蔵野市の通常学級で勤務し3年目を迎えました。
地域を見ると、第3→第3→第9地域と異動してきたことがわかります。
これまでの要綱では、地域の経験が2つしかありませんから、第3地域と第9地域以外の地域を経験しないと「同一地域内での異動」は認められません。しかし、杉並区から武蔵野市へ異動したときステージはAからBに変わっていますので、「2ステージ経験」が認められることになり、「3地域を経験したものとみなす」ので次の異動では「同一地域」=武蔵野市内異動が認められることになります。

都教委は、東京教組の質問に対し「(ステージ制と3地域経験のみなしは)期限を設けず遡及させていく」と回答しました。異動にあたっては、これまでの異動でどのステージを経験したことになるのかきちんと把握しておくこと、ステージ経験について管理職とも「共通理解を図る」ことが重要となります。

6 自己申告書(異動について)」の教職歴に「ステージ経験の記入欄」が新設
これまで説明したように、異動にあたって自分のステージ経験を把握しておくことは、極めて重要になってきます。また、「異動要綱の改正、ステージ制の導入に伴って自己申告書(異動について)はどのように変わるのか」という東京教組の質問に対し、都教委は「教職歴のところに新たにステージ経験を書いていただく欄を設ける予定」と回答しました。9月後半にははじまると予想される中間面接に向けて、異動地域経験とステージ経験を把握し正確に記入できるようにしておきましょう。東京教組も、イエローカードに同様の欄を設ける予定です。

7 これからのとりくみ
東京教組では、これまで同様、組合員の異動について「希望地区への異動の実現」をめざしてとりくみをすすめていきます。9月には、人事対策特別委員会を開催し、支部書記長へ今回の要綱改正のポイントや地教委交渉の課題、今後の異動スケジュールについて説明を行います。
また、「2013人事異動資料集」を発行しイエローカードとともに全組合員に配布します。職場でも、声を掛け合い、新しい異動要綱について理解を深めていきましょう。異動についての相談は、各支部または、東京教組までお願いいたします。