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職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告書

パワハラをなくし、働きやすい職場をつくりましょう

厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」(主査:佐藤博樹東京大学大学院情報学環教授)では、職場の「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」が、近年、社会問題として顕在化してきていることを踏まえ、「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」(座長:堀田力さわやか福祉財団理事長)からの付託を受けて、昨年7月から、(1)この問題の現状と取組の必要性、(2)どのような行為を予防・解決すべきか、(3)この問題への取組の在り方等について議論を重ねてきました。

1月30日の第6回会合において、報告書がまとまり公表されました。その概要について紹介し、すべての職場でパワハラをなくし、働きやすい職場をつくる参考にしていただければと思います。

1,     パワハラの問題にとりくむ必要性と意義

○「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」は、労働者の尊厳や人格を侵害する許されないものであるが、とりわけ、職務上の地位や人間関係を濫用して意図的に相手をいじめたり、嫌がらせを行ったりすることは許されるものではない。
また、そのような意図はなくとも、度の過ぎた叱責や行き過ぎた指導は、 相手の人格を傷つけ、意欲や自信を失わせ、さらには「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」を受けた人だけでなく行った人も自分の居場所が失 われる結果を招いてしまうかもしれない。
○人は他者との関わり合いの中で生きていく存在であり、職場は人生の中で 多くの時間を過ごす場所であるとともに、多様な人間関係を取り結ぶ場でもある。
そのような場所で、「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」を受けることにより、人格を傷つけられたり、仕事への意欲や自信を喪失したり、 さらには居場所を奪われることで他者との関係性を断たれるなどの痛みは計り知れないものであり、生きる希望を失う場合もある。
私たちは時として他者の痛みについては鈍感であるが、「もし、自分が、 自分の家族が「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」を受けたらどう感じるか」を想像することでこの問題の重要性が理解できよう。
○ 以上を踏まえると、「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」が企業にもたらす損失は、想像するよりも大きいといえる。
「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」を受けた人にとっては、人格を傷つけられ、仕事への意欲や自信を失い、こうしたことは心の健康の悪化にもつながり、休職や退職に至る場合すらある。
周囲の人たちにとっても、「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」 を見聞きすることで、仕事への意欲が低下し、職場全体の生産性にも悪影響を及ぼしかねない。
また、「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」を受けた人やその周囲の人だけでなく、行った人も不利益を受けうることになる。「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」を受けた人や周囲の人たちの生産性が低下することで職場の業績が悪化し、社内での自身の信用を低下させかねない。また、懲戒処分や訴訟のリスクを抱えることにもなる。
企業にとっても、「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」は従業員間の問題にとどまるものではない。組織の生産性に悪影響が及ぶだけでなく、貴重な人材が休職や退職に至れば企業にとって大きな損失となる。
さらに企業として「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」に加担していなくとも、これを放置すると、裁判で使用者としての責任を問われることもあり、企業のイメージダウンにもつながりかねない。

「報告書」では、「いじめ・嫌がらせ」「パワーハラスメント」の問題について、この様に厳しく述べ、次の様に提言しています。

○「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」問題に取り組む意義は、こうした損失の回避だけに終わるものではない。一人ひとりの尊厳や人格が尊重される職場づくりは、職場の活力につながり、仕事に対する意欲や職場全体の生産性の向上にも貢献することになる。この問題への取組を、職場の禁止事項を増やし、活力を削ぐものととらえるのではなく、職場の活力につながるものととらえて、積極的に進めることが求められる。

 

2、パワーハラスメントの定義

○「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」という言葉は、一般的には、そうした行為を受けた人の主観的な判断を含んで用いられることに加え、どのような関係の下で行われる、どのような行為がこれらに該当するのか、人によって判断が異なる現状がある。とりわけ、同じ職場内で行われる「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」については、業務上の指導との線引きが難しいなどの課題があり、この問題への労使の取組を難しいものとしている。
そのため、職場の一人ひとりがこの問題を自覚し、対処 することができるよう、どのような行為を職場からなくすべきであるのかを整理することで、労使や関係者が認識を共有できるようにすることが必要であると考えた。

「報告書」では、このように述べた上で、職場のパワーハラスメントについて、次の様に定義することを提案しています。

 職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位|や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。

3、職場からなくすべき行為と行為類型
さらに、「報告書」は、「職場のパワーハラスメントに当たりうる行為類型としては、以下のものが挙げられる(ただし、当たりうる行為の全てを網羅するものではない)」として、以下の様に整理しました。

①   身体的な攻撃

暴行・傷害

② 精神的な攻撃

脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言

③ 人間関係からの切り離し

隔離・仲間外し・無視

④ 過大な要求

業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害

⑤ 過小な要求

業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

⑥ 個の侵害

私的なことに過度に立ち入ること