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2024年12月11日(水)

都教委に「長時間労働是正と労働安全衛生体制整備を求める要請書」、「スピーキングテストの実施を中止し、スピーキングの充実に向けた新たな施策を求める要請」を提出しました

東京教組は、11月27日に東京都教育委員会に、教職員の過重労働問題と、都立高校入試に導入している英語スピーキングテストの問題点に関して、2本の要請書を提出しました。

1.長時間労働の是正について
(1)ICTやタイムカードを活用した、客観的な方法による「在校等時間」による勤務時間把握の徹底をすすめ、公簿として把握されている勤務時間記録を公表すること。また、持ち帰り業務も含めた長時間労働の是正にむけ、具体的な業務削減にとりくむこと。
(2)教職員の未配置状態を早急に解消すること。また、正規教員の採用計画を見直すこと。
(3)国の定数法に縛られず、学校運営に必要な教職員数を確保すること。また、そのための予算確保も含め、国の定数法改善にむけた具申を行うこと。
(4)教職員が休暇制度を利用しやすくなるよう、余裕を持った教職員の配置をすすめること。
(5)労働基準法で定められている休憩時間が十分に取られていない実態をふまえ、休憩時間の確保に努めること。
(6)標準授業時数(1,015時間)を大幅に上回って教育課程を編成している学校については、早急に見直させること。
(7)中教審答申で示された「学校・教師が担う業務に係る3分類」にもとづき、プールなどの学校施設の管理するための人員配置、学校給食等の公会計化や、休日の部活動の地域移行の推進など、積極的に移行をすすめること。
(8)養護教員、事務職員の全校配置、また、大規模校には複数配置をすすめること。
(9)事務職員・栄養職員等について36協定の締結・遵守を徹底すること。

2.労働安全衛生体制の整備について
(1)労使で構成される安全衛生委員会へ、教職員組合代表者を労働者代表として参画させること。また、安全衛生委員会において、在校等時間の記録等をもとにした業務削減について協議をすすめること。
(2)設置者の責任において、50人未満の学校を複数校まとめて50人以上の事業所とするなど、労使で構成する安全衛生委員会を設置すること。また、労働安全衛生に関する研修を行うこと。
(3)各校ごとに産業医等を選任するのではなく、教育委員会で産業医の要件を備えた医師を任用・選任し、複数の公立学校の教師の健康管理を担当させるなどの工夫を推進すること。
(4)各学校においてストレスチェックの結果をまとめ、地域ごとの結果の集団分析を基に、ストレス状況の改善に活用すること。
(5)教職員の勤務時間の管理やメンタルヘルス対策について、管理職の人事評価項目とすること。

3.学校の働き方改革について
(1)首長部局と教育委員会が一体となってとりくみを推進する観点から、学校における働き方改革を含む教職員を取り巻く環境整備について、積極的に総合教育会議の議題とすること等を求めること。
(2)「学校の働き方改革」について、保護者や地域住民等に対して広く周知すること。

4.都道府県だけでは解消できない課題については、教育委員会、首長部局から国への具申を行うこと

以上

 日頃より、東京都の教育の充実に尽力されていることに、感謝申し上げます。
 さて、貴教育委員会は、現在外部業者・団体による英語スピーキングテストを実施し、都立高校入試へ活用してきました。外部団体・業者が高校入試へ大きく関与することの様々な問題点は、導入が計画されている段階から、当組合が、多くの市民団体、保護者らとともに指摘してきました。
 現場職員によるテストの申込手続きが大きな負担となっていることもその1つです。今年度、その申し込み手続きにおいて、他校の生徒情報が登録され見ることができてしまう事例が確認される、申込完了報告を一度押してしまうと訂正できない、などの見逃せない不具合・個人情報の流失が確認されました。大変由々しき事態であると考えます。そして、その対応はすべて現場職員が担っています。
 その他にも「登録できない」「やり方がわからない」「アカウントが複数ありわからない」「クラスの番号表示が三桁になる」「写真がつぶれて顔写真が確認できない」などの保護者からの問い合わせが学校に相次ぎ、その対応に追われています。
 この事態からわかることは、ICTなどの最新技術の活用は、入試などの全員に係る対応については、まだ時期尚早であるということです。技術革新が進んでいるといっても、子どもの家庭状況は様々です。「端末の操作」に不慣れな家庭や通信環境の差が大きいことを認識し、それを放置して強行すれば差別的扱いにすらなるということを、もっと重大なこととして捉えなければなりません。また、現在の対応では最終的に申し込み完了の確認を教員が行うことになっていることも大きな負担です。入試に係る業務であり、学校側の確認が必要になることはある程度仕方がないことなのかもしれませんが、膨大な作業が突然押し付けられたというのが現場の感覚です。慎重を期さなければならない入試の申し込みが年に2回、さらに1・2年生でも実施と大幅に増えたとも言えます。
 改めて、貴教育委員会がこのスピーキングテストを導入するときの「検討委員会」の報告書を確認すると「試験実施団体に求めるスピーキングテスト要件」の「実施・運営に関すること」として、「個人情報の保護、受験に関する不正行為・情報流失への対応」「中学校の教員は関与しない」などが挙げられています。この事項は明らかに守られていません。さらに「基本的事項」として「週休日又は祝日」に「大学等の外部施設を会場」として行うという内容になっていますが、これは中学校1年生、2年生については全く当てはまっていません。現場からは「詐欺にあった気分だ」という声まで聞こえてきます。
 このような状況で、中学校の授業時間や教員の労働時間の多くが割かれていることには大きな危惧を覚えます。この原因は、突き詰めれば「民間業者の機械的なテスト」によって、安易に英語教育を改善しようとしたことにあると考えます。機械に吹き込む「スピーキング」ではなく、現場の声を十分聞きながら、もっと会話の機会を増やすためのネイティブスピーカーの人材確保や、授業中の会話を促す教材開発に力を入れるべきです。
 直ちに外部業者・団体によるテストは中止し、代わりに英語の授業で会話・対話を増やすための人材を確保するため、以下の事項を要請します。

1.スピーキングテストの実施・申し込みへの中学校教員の関与を直ちにやめること。
2.不安定な申し込み状況にあることに鑑み、テスト結果を都立高校入試に活用しないこと。
3.外部業者・団体によるスピーキングテストの実施は中止すること。

以上