小学校の教員として、DV家庭に育つ子どもと出会い、DVが子どもたちの心に大変な負担と傷つきを与え、その成長に大きな影響を与えると痛感し、退職後、大学の修士論文としてまとめたものである。教育現場の経験から出発した論文だけに、すぐにも学校で役に立つ提言も数多くあり一読をお薦めする。
著者の徳永恭子さんは、東京教組の先輩教員。退職後に「親と子の教職員の相談室」の相談員をしながら大妻女子大学現代社会学修士課程に進み、現在、同大学人間生活文化研究所研究員。
冊子は、DV・児童虐待の中で育つ子どものトラウマと脳の発達についての考察、教職員にDV家庭に育つ子どもについてアンケート調査を実施した結果から分かったこと、DV家庭に育つ子に伝えたい20のメッセージ、教員に伝えたい20のメッセージなどで構成されている。
徳永さんは考察のまとめで、
私の調査に協力した教職員のうち3割以上の人が、DV家庭に育つ子どもたちが、勉強が遅れがちである、忘れ物が多く宿題もやってこないことがある、友達ともトラブルが多い、勉強や作業に集中しないことがあるなどと答えている。生活環境の不安定さや生活リズムの不安定さは、子どもに様々の影響を与える。しかし、精神的に不安定な様々な行動を示す子どもが、必ずDV家庭に育っているというわけではない。ただし、子どもの一つーつの行動や表情や態度は、必ず理由かおる。 DVは不安定な行動の一つの、ある局面の理由かもしれないし、もっと別の背景かおるかもしれない。子どもの行動や表情や言葉が、その場面で、その人間関係の中で、なぜ現れるのか、子どもの内面や心理に敏感になることが大切である。
と述べている。精神的に不安定な子どもに出会うことは、学校でしばしばあるが子どもの内面や心理を読み解く示唆になる論文でもある。部数限定の自費出版だが、徳永さんは希望する方には差し上げますとのこと。ホームページの「お問い合わせ」フォームからお申し込みください。