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教育研究

東京教組は、各教科・領域の教育研究を年間を通じて行っています。
毎年、10月には、教育研究集会を開催し、全都の教育研究をまとめて発表します。

教育研究資料

 

         2016年度  東京教組教育研究集会  基調報告(案)

              「教え子を再び戦場に送るな」

   「改憲」を許さず、人権にもとづいた子どものゆたかな学びを保障する、カリキュラムづくりをすすめよう

はじめに

この夏話題になった映画「シン・ゴジラ」のゴジラは、海底に廃棄された放射性物質を身体に取り込み、巨大化していきます。大きくなったゴジラは東京湾から東京に上陸、街を破壊していきます。この巨大生物をどうするか。政府は右往左往し機能しない中、何より早くアメリカが動きます。日本は常にアメリカの支配下にあることを痛感させられることとなります‥‥‥原爆、原発、放射能。ただの特撮映画と思って見たこの「シン・ゴジラ」は、映画そのものの評価は別として、日本の現状が少なからず描かれていました。いまだに日本には解決しなければならない、しかし解決の見通しさえたっていない問題が山積みになっているのではないでしょうか。

いよいよ動き出す「改憲」

2016年の夏は、後に日本の針路を大きく左右する年といわれるに違いありません。7月におこなわれた参議院議員選挙では、選挙間際になりようやく一人区での野党共闘が実現し、一定の成果を得ることができましたが、残念ながら改憲を是とする勢力に憲法改正を発議できる三分の二の議席獲得を許してしまいました。そして、この後行われた東京都知事選挙でも、美濃部都知事が誕生した時以来の野党共闘が成立したにもかかわらず、大敗を喫してしまいました。この選挙結果を受け早速安倍政権は、改憲に向けた具体的論議に着手する構えを見せています。さらに、今まで三度も廃案となった「共謀罪」を新たな名称で提出するという動きもあります。「改憲」はもう目の前に来ています。

「次期学習指導要領審議のまとめ」からみえてくるもの

中央教育審議会は8月26日付でこれまでの審議の経過をとりまとめ「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」として公表しました。文科大臣の「脱ゆとり宣言」をうけ、グローバル化の進展や人工知能(AI)の進化等の社会的背景の変化を理由に、教育内容を大幅に変更し、指導方法や評価にまで言及する由々しき内容となっています。

「審議のまとめ」から見えてくるのは、小学校の教育課程の大幅な改訂です。それによれば、『小学校の外国語教育を今までの「聞くこと」「話すこと」に「読むこと」「書くこと」を加え、全ての領域でバランスよく育む教科型の外国語教育を目指す』とされています。そのため高学年から年間70単位時間程度の時数確保を目指すとしています。そして、そのための時間の確保として60分授業を設定したり、長期休業期間での学習、土曜日の活用、週当たりの授業コマ数を増やすなどがあげられるとしています。ただでさえ、「学力向上」の名の下に疲弊している子どもたちに追い討ちをかけるような内容が、この「審議のまとめ」には詰め込まれています。小学校では外国語教育以外にも「プログラミング教育」を行う単元の導入をうたっています。中学校では、部活動に対する問題点が明らかになってきたことを受けてか、部活動に対する記述が中心となっています。それによると「部活動は将来にわたり持続可能な活動を目指す」としており「外部人材の活用」など「教員の負担軽減の観点」が盛り込まれていますが、具体的にどのように行おうとしているのか、しっかり見極めていく必要性を感じます。特に「深い学びを実現する」として教科と部活動の関連性を強調していますが、部活動を教育課程に位置づけるための布石ととらえることもできます。部活動は教育課程外の活動であることを明確にさせていかなければなりません。

高等学校ではほとんどの教科を大幅に改編しています。特に目立つのは公民科を「公共」という科目にするということです。この「公共」という科目名は仮称とされていますが、自民党の「日本国憲法改正草案」が今までの日本国憲法と比べ「公のために」が強調されていることと関係があるように思えてなりません。また、高校における道徳教科化の布石と捉えることもできます。

その道徳に関しても昨年2015年の3月に学習指導要領の一部改訂がなされ「特別の教科 道徳」が小学校では2018年から、中学校では2019年から実施される事になります。2016年8月26日に出された中央教育審議会の論点整理によれば、「確かな学力」「健やかな身体」「豊かな心」を単独としてとらえるのでなく「何を知っているか、何ができるか」「知っていること、できることをどう使えるか」「どのように社会、世界と関わりより良い人生を送るか」を重視しています。そして最後のこれが、道徳性の育成と結びつくとしています。しかし何が良い人生かは子どもたち自らが決める事であり、国が介入すべき問題ではないのではないでしょうか。だからこそ私たちは教育の場に立つものとして、教育実践・研究にこれまで以上に力を入れなければなりません。子どもの視点にたった子どもが主体となる教育実践・研究を続けることこそが「教育改革」に対峙する大きな力となります。

今こそ「人権」を大切にした教育を

神奈川県相模原市の「津久井やまゆり園」における、19人の障害者が殺害され、職員を含む27人が重軽傷を負った事件の衝撃は今でも深く広がっています。今年4月に「障害者差別解消法」が施行されたばかりの惨劇に言葉にならない悲しみと恐怖、そして怒りが、私たちを包んでいます。

犯行を事前に予告し、「障害者は必要のない人間だ。安楽死させるのが一番だ」と正当化している点で、これはヘイトクライム(憎悪犯罪)以外のなにものでもなく、障害者差別解消法や障害者権利条約の理念を全否定するものです。この事件は「入所施設というものの問題」や「被害にあわれた方の匿名報道の問題」など、多くの疑問や違和感を私たちに投げかけました。その中でも容疑者である元職員が掲げた「優生思想」には戦慄を覚えずにはいられません。しかし、彼が抱えた闇を彼の特異性としてかたづけてはなりません。かつて石原慎太郎元都知事は、都立府中療育センターで「ああいう人に人格あるのかね」と発言しました。また、昨年の11月、茨城県教育委員会の長谷川智恵子委員は、障害児について、「こういう子は出生前になんとかならなかったのか、茨城県の障害者はもっと減らせたのではないか」と述べています。ネット上では、この元職員の発言を「良くぞ言ってくれた」と共感する動きさえありました。今回の惨劇は、残念ながら私たちの日常の延長線上にあるということから、私たちは目を背けてはならないでしょう。そして、この元職員のことばの背景に、安倍政権によってつくり出された「強いものだけが勝ち残る」「少数者を切り捨てる」「異質な者を許さない」不寛容な社会が見えてきます。

私たち東京教組は、結成以来真摯に人権教育にとりくんできました。また、毎年都障労組とともに「障害」児教育研究集会を開催し、「誰もが共に」生きる社会の実現をめざしてとりくんできました。子どもたちにこの事件をどう伝え、共に考えていけるか。私たちの教育実践が問われています。

「子どもの権利条約」に根ざした教育を

2016年4月、国連ユニセフのイノチェンティ研究所がOECD等の加盟41か国中、日本は所得格差が大きいほうから8番目であり、所得分布の底辺から10%の子どもの世帯所得は、中央値の40%の所得しかないという報告書を公表しました。子どもの貧困は、16.3%、6人に一人といわれていますが、数の問題だけでなく、日本における貧困の深さがどれほど深刻なものであるかをこの数値は示しています。また、経済的理由での高校中退者は1200人を超え(文科省2015)高校奨学金の滞納額も2014年度末時点で約159億円であると報道されています。教育への公的財政支出がOECD諸国の最下位に近く、私費負担が大きい日本では有効な貧困対策が打ち出されない中、保護者の経済格差が教育格差となり、子どもの貧困の連鎖へとつながっていきます。ようやく政府は解消をめざしてとりくみ始めましたが、その内容は政府として資金を投与するのではなく「子供の未来応援運動」をたちあげ、民間資金で基金を作り、支援団体に助成金や総理大臣表彰をおこなうなど、名ばかりの対策となっています。「子どもの貧困対策法」の具現化や給付型奨学金の創設をはじめとして、子どもの権利条約、国際人権規約の具現化を早急に進めていかなければなりません。また、いじめ、虐待、不登校の件数は依然として高い数値を示しています。過度の競争的な環境が子どもを追い詰め、いじめや不登校につながっていると「子どもの権利委員会」から指摘されているにもかかわらず、全国学力調査や各種の学力テストの結果公表などの競争主義が学校に持ち込まれているのが実情です。そして、そのいじめ対策としての「道徳の教科化」は、決して子どもの気持ちに寄り添ったものにはなりえません。子どものおかれている状況を子どもの人権の視点から捉えなおしていくことが必要です。それは、憲法の理念の実現につながり、平和・人権・環境・共生を尊重する社会を主体的に築いていく力となるものです。これは「子どもの権利条約」のもとで学校現場を含む教育の場でおとなによって保障されることが大切です。今こそ私たちは子ども達の「ゆたかな学び」の必要性を地域・保護者に訴えていかなければなりません。

今私たちがとりくむべきものは何か

昨年の教研集会では政治学者の山口二郎さんに、戦後民主主義の危機の現状と今後の行動提起をしていただきました。しかし、民主主義をめぐる状況は、昨年以上に危機的です。そこで今年は作家の高橋源一郎さんにおいでいただき、この混迷する政治状況に対応するため、私たちは何を考え行動していけばよいかをお話していただきます。参議院議員選挙直後、「どのような言葉なら、どのように話せば人々に気持ちが伝わるのだろうか」という無力感にさいなまれていました。その数日後、朝日新聞に載った高橋さんの選挙戦をまわってのルポは、非常に考えさせられるものでした。

今、日本社会に求められているのは「個人の尊厳」を追求する憲法理念の実現であり、未来を担う子ども達の尊厳を守ることです。

そして、私たちが今まで積み重ねてきた「平和」「人権」「環境」「ジエンダー平等」などの実践を貴重な教育財産として次世代に引き継いでいくことが急務です。実践の交流を通して仲間のつながりを改めて確認し、職場から支部へ、支部から東京全体へと連帯の輪を広げていきましょう。

分科会レポート

社会科教育      「五日市憲法をどう教えるか」  村山 正榮(西多摩・大久野小)

人権・国際理解教育  「子どもたちの思いを・・」   光賀 裕一(墨田・八広小)
「小山さんってすごい」路上生活者理解の授業  吉田 美紀(墨田・曳舟小)
「教育計画に人権・同和教育の種を蒔く」-お肉の情報館見学と人権ポスターの製作-
曽根 玲(品川・清水台小)

平和教育       「江戸川原爆慰霊の取り組みと、小岩小での取り組み ~東京・ヒロシマ子ども派遣団を起点として~
阿部 桂佑(江戸川・小岩小)
「ヒロシマの心をつなげる」   佐谷 修(杉並・八成小)

教育課程・学校五日制 「教育改革」の問題点      佐藤 郁夫(西多摩・瑞穂第二小)

環境教育       「ゴミと環境」         島田 秀眞(江戸川・上小岩第二小)

健康教育       「養護教諭の職務を考える」 四肢の検診についてアンケート調査をもとに
井口 忠子(世田谷・砧中) 小林 泰子(世田谷・松沢中)

両性の自立と平等   「いのち」の授業        平林 麻美(品川・大井第一小)

「障害」児教育    アートで気持ちのワープ     大川 葉菜(調布・第六中)  10/29開催